前回ではよくわけのわからん予備知識を説明しました。ここでもよく分からない説明します(笑)

しかし!!

ここでは、ついに「電磁石はどういう現象で物を引き付けていますか?」の答えが載っています!!ここでは太字がベクトルを示します。

減磁力

真空中の磁束密度B₀(B₀=μ₀H₀)中に透磁率μの磁性体を置くと、内部の磁束密度はB=μH₀ではありません。内部の磁界はH₀より小さくなります。図2.1を見てください。
磁界中に置かれた磁性体
図 2.1磁界中の磁性体
図2.1のようになった時、内部に作る磁界は元の磁界H₀とは逆になります。よってH₀よりも小さくなると考えられます。ここではν:減磁率、Jm:磁荷ベクトルとする。この二つの差を
・$Hd=H_{0}-H=νJm$ (2.1)
で表すことが出来ます。

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強磁性体のB-H特性

強磁性体の磁束密度Bと置かれている場の磁界Hは特徴的な相関関係を示します。また、こいつは過去にどのような磁荷を経験したかに関係した値が示されます。それが図2.2です。
BH特性
図 2.2B-H特性
1.磁化されていない時を0とする。Hを大きくすると0→A→Bと磁束は変化する。
2.Hを小さくするとB→Cと変化する。この時H=0でB=Brを保つようになる。この時Brを残留磁束密度と言う。
3.Hをさらに小さくするとC→Dと変化する。H=HcでB=0となる。この時Hcを保持力と言う。
4.Hをさらに小さくするとD→Eと変化する。
5.Hを大きくするとEから逆方向に変化する。

と言ったように磁性体内の磁束密度は閉ループを繰り返す。この閉ループをヒステリスループと言います。一般にB₁からB₂に変化するときに必要なエネルギーは
・$Wm=\int_{B_{1}}^{B_{2}}\textbf{H} d\textbf{B}$ (2.2)
と示すことが出来ます。なので磁性体を磁化するときにヒステリスループ1周するごとに
・$Wm=\oint\textbf{H} d\textbf{B}$ (2.3)
のエネルギーが必要になります。(ヒステリスループの面積)このエネルギーを「ヒステリス損」と言います。また図2.2は図2.3とも書くことが出来ます。ψ:鎖交磁束、L:インダクタンス
鎖交磁束バージョン
図2.3鎖交磁束バージョンのB-H特性
この時鎖交磁束は
・$ψ=Nφ=Li$ (2.4)
と示すことが出来ます。
次は単位変換の時間です。縦軸と横軸を掛けた値の単位は
[wb・A]≒[V・SA]≒[J]
と示すことが出来るんですよ!つーことは…この鎖交磁束バージョンも、ちゃんとエネルギーを示してくれています。


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磁気回路

透磁率が大きければ大きいほど磁束が通りやすいです。ってことは図2.4のように透磁率で大きい経路を考えた時は電気回路のような関係が成り立ちます。i:電流、μ:透磁率、l:磁路長、S:経路の断面積、N:単位長さ当たりコイルの巻き数、φ:磁束、Rm:磁気抵抗
磁気回路
図2.4 磁気回路
この時N・iを起磁力と言い、電気回路で言う電源と同じよう役割を果たします。これらの関係は
・$Ni=Rmφ$ (2.5)
・$Rm=\frac{l}{μS}$ (2.6)
と示すことが出来る。

しかし、一点だけ電気回路とは違う点があります。それは「漏れ磁束」と言うものがある点です。電気回路では導体と絶縁体の伝導率が10¹⁰~10²⁰違いますが、磁気回路では空気と磁性体の透磁率は10⁵を超えないです。つまり、磁束が完全に磁性体内を通っているとは考えられず、少し空気中に漏れ出ると考えられます。そいつが漏れ磁束です。

ではギャップがある場合はどうでしょうか。図2.5にあるよな磁気回路を考えます。i:電流、μ:磁性体の透磁率、μa:空気の透磁率、l₁:磁性体中の磁路長、l₂:ギャップの磁路長、S:経路の断面積、N:単位長さ当たりコイルの巻き数、φ:磁束、Rm₁:磁性体中の磁気抵抗、Rm₂:ギャップの磁気抵抗を示します。
磁気回路ギャップバージョン
図2.5 磁気回路ギャップありバージョン
・$R_{m1}=\frac{l_{1}}{μS}$ (2.7)
・$R_{m2}=\frac{l_{2}}{μS}$ (2.8)
・$W_{1}=\frac{R_{m1}φ²}{2}$ (2.9)
・$W_{2}=\frac{R_{m2}φ²}{2}$ (2.10)
とそれぞれ示されます。
試しに値を入れて計算してみると分かるんですが、磁性体中と比較して、ギャップに大きなエネルギーが集まります。

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コイルガンの飛ぶ原理

ここまで来たところで、やっとこの原理編の核心に迫ります!!
電磁石はどういう原理で物を引き付けるのか。図2.6のように壁にばねで接続された可動鉄心がギャップ部分にあるとします。
可動鉄心バージョン
図2.6 磁気回路可動鉄心バージョン
この時、エネルギーの関係式は
・$ieΔt=ΔWm+FΔx$ (2.11)
と示すことが出来ます。左辺が電力に時間の積、右辺が磁界のエネルギーと仕事で計算できる値です。
ここで逆起電力の式(ファラデーの電磁誘導の法則)
・$e=\frac{dψ}{dt}$ (2.12)
の式より(2.11)の式が
・$iΔψ=ΔWm+FΔx$
と書きなおすことが出来ます。皆さん図2.3のψバージョンのB-H特性の図覚えてますか?ψiはエネルギーを表していましたね?なんだかこの式よさげな感じがしてきませんか?
これを左辺にF持ってくると…
$F=i\frac{Δψ}{Δx}+\frac{ΔWm}{Δx}$
と書けるわけですよ。そんでもってこのΔxをめっっちゃ微小に近づけると
$F=i\frac{dψ}{dx}+\frac{dWm}{dx}$ 
$  =\frac{d}{dx}(ψi-Wm)$ [N]
とかけちゃいます。この(ψi-Wm)は図2.7で斜線部分を示します。
エネルギー
図2.7 (ψi-Wm)の部分
こいつ曲線ですが、ほぼ直線なんで、ψiの1/2の値となります。また、式(2.4)を使うと
・$  F=\frac{d}{dx}\frac{Li²}{2}$ [N] (2.13)
と表せます。


次は図2.8の場合を考えてみます。可動鉄心が磁性体内にスライドできるよう、設置されていているとします。ギャップの距離はxです。
改可動鉄心バージョン
図2.8 可動鉄心横バージョン
さっきの式(2.13)までは同じです。新たに考えるのは…インダクタンスと磁気抵抗!!こちらは
・$ L =\frac{N²}{Rm}$ (2.14)
・$  Rm=\frac{x}{μS}$ (2.15)
って示せましたよね?この(2.13)(2.14)(2.15)をみんな使うと!!!
・$  F=-\frac{μSN²i²}{2x²}$ [N] (2.16)
と表せる力で引っ張られるのです!!!

この力が示しているもの、
それは、
ソレノイドに入力したエネルギーから、ヒステリス損分を引いたエネルギー!!
これが電磁石が物を引き付ける力の正体です!!

要するに余ったエネルギーが、運動エネルギーに変換されているってことですね!


それじゃあコイルガンでは具体的にどういった構造にすればいいのか。それは図2.9のようにソレノイドの周りを透磁率の高いやつ
でかこみゃ良いんですよ!!
ソレノイド
図2.9理想的なコイル形態
右からひょこっとで出るやつが、飛ばす物です!!これで考えれば、式(2.16)をまんま使えるはず!!



なかなか感動しませんか?私はこれを導けたとき「そーーーーいうことか!!」と感動しました(笑)
これで、あなたはどや顔で友達にコイルガンの事を話しても恥をかかずにすみます!!是非布教しましょう!(笑)



次回「コイルガンの作り方~回路編①電子部品の説明~




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