ここでは、前回の電子部品の説明に続きオペアンプの説明をします。コイルガンではこの部品を用いて矩形波を生成することで、DC-DC昇圧を可能にします。

オペアンプとは

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図1 オペアンプ

オペアンプとは電圧増幅器の事です。図2にオペアンプの記号を示します。
オペアンプ純
図2 オペアンプ記号

トランジスタや抵抗など様々な部品を組み合わせて作られたICであり入力された電圧をもとに増幅された電圧を出力するというもので、端子-IN側の電圧をV、端子+IN側の電圧をV、増幅率をAとすると 
・$V_{out}=A(V_{p}-V_{n})$ (1)
の電圧で出力することが出来る電子部品です。
これだけ聞くと、増幅率さえ大きくすれば無限に大きな電圧を出力できそうな気がしますが、残念ながらそんな都合のいいことは出来ませんというのもこのオペアンプというものは出力電圧が電源電圧に依存するという特徴があります。図2では足が3本しか書かれていませんが、実際はこいつを動作させるための電源の足が2本足されます。図3みたいな感じで。
オペアンプ電源付き
図3 オペアンプ電源付き

この図に示してあるように、±の電源を繋げて使用する部品になります。この±には、-に負の電圧+に正の電圧を印加する物、-側がGNDになっている物、+側がGNDになっている物の3種類あり。こいつらの事をそれぞれ「両電源タイプ」「単電源タイプ」と言います。そんで、電源電圧に依存するというのは、この電源の電圧以上の出力が出来ないという事です。つまり、電源に±10 Vの電源を繋げたとしたら、MAXは±10 Vになります。
図1の写真だと8本の足があるじゃないか!って思った人いますね?これはデータシートを見ると解決します。例として、新日本無線のNJM2904というオペアンプのデータシートを見てみましょう。
データシートはこちら
図4にNJM2904Cのデータシートからピン配置部分を切り出した図を示します。
ピン配置
図4 NJM2904Cのピン配置

これを見ると分かるように、内部にはオペアンプが2個入っていて、尚且つ電源を入力するところが2個あるのが分かります。このように、足が5本以上ある理由は回路が2個入っているからです。ここでは2回路入っているものを示していますが、もちろん1回路のみの物もあります。この時は、何の役割も持たない足が存在します。電源に使える電圧の上限が大きい物や、応答性に優れているものたくさん電流を流せるものなど様々な種類のものがあります

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オペアンプの増幅回路

実際にオペアンプを使用するには、増幅回路を組まないと使用することが出来ません。種類は2種類!「反転増幅回路」「非反転増幅回路」です。どんな回路かは、文字の通り電圧を反転して増幅する回路と、ただ単に増幅だけする回路です。

反転増幅回路
図5に反転増幅回路を示します。
変転増幅回路
図5 反転増幅回路

図に示したような回路を組むと反転増幅回路が完成します。出力される電圧は
・$V_{out}=-\frac{R_{2}}{R_{1}}V_{i}$ (2)
で示される電圧が出力されます。

式だけだとよく分からないので実験してみましょう。

実験条件は
1.図5の回路を組み立てた、オペアンプはUA741汎用オペアンプ(データシートはこれ)、電源は±15 V、R₁=10 kΩ、R₂=100 kΩ、R₃=10 kΩ
2.Viから入力端子に-2 V-2 Vの電圧を変化させながら印加し、出力電圧を観測する。
3.Viから
入力端子にファンクションジェネレータから100Hz振幅1Vを入力しその時の入出力波形を観測した。
4.ファンクションジェネレータから18.5 kHz振幅1 Vの電圧を入力しその時の入出力波形を観測した。

図5に入力端子に-2 V-2 Vの電圧を変化させながら印加した時の出力電圧を示す。
反転増幅特性
図5 入力端子に-2 V-2 Vの電圧を変化させながら印加した時の出力電圧

図5よりわかるように、入力された電圧に対し、反対の電圧が増幅されて出力されているのがわかる。最大電圧は電源電圧で打ち止めになっているのがわかる。
図6にファンクションジェネレータから100Hz振幅1Vを入力した時の出力波形、図7にファンクションジェネレータから18.5 kHz振幅1 Vの電圧を入力した時の出力波形を示す。
反転増幅
図7 ファンクションジェネレータから100Hz振幅1Vを入力した時の出力波形


反転増幅スルーレート
図8 ファンクションジェネレータから18.5 kHz振幅1 Vの電圧を入力した時の出力波形

図7から分かるように入力波形に対して、増幅された電圧が出力されているのがわかる。増幅率は10倍で、式(2)から導き出される値と同じになる。一方図8では、入力波形に対して正しく増幅されていない。これは、オペアンプのスルーレートに依存するものである。
スルーレートっていうものは図9に示すようにデータシートに載っている、オペアンプの性能指標の一つで、立ち上がり速度の限界を示しています。
sr
図9 UA741汎用オペアンプのスルーレート
ここに示してあるように、図8の出力電圧の傾きは0.5 V/µsになっているのがわかります。



非反転増幅回路
図10に非反転増幅回路を示します。
非反転増幅回路
図10 反転増幅回路

図に示したような回路を組むと非反転増幅回路が完成します。出力される電圧は
・$V_{out}=(1+\frac{R_{2}}{R_{1}})V_{i}$ (3)
で示される電圧が出力されます。

式だけだとよく分からないので実験してみましょう。

実験条件は
1.図10の回路を組み立てた、オペアンプはUA741汎用オペアンプ(データシートはこれ)、電源は±15 V、R₁=10 kΩ、R₂=10 kΩ
2.Viから入力端子に-2 V-2 Vの電圧を変化させながら印加し、出力電圧を観測する。
3.Viから
入力端子にファンクションジェネレータから100Hz振幅1Vを入力しその時の入出力波形を観測した。


図11に入力端子に-2 V-2 Vの電圧を変化させながら印加した時の出力電圧を示す。
非反転増幅特性
図11 入力端子に-2 V-2 Vの電圧を変化させながら印加した時の出力電圧

図11よりわかるように、入力された電圧に対し、電圧が増幅されて出力されているのがわかる。最大電圧は電源電圧で打ち止めになっているのがわかる。
図12にファンクションジェネレータから100Hz振幅1Vを入力した時の出力波形
非反転増幅
図12 ファンクションジェネレータから100Hz振幅1Vを入力した時の出力波形

図12から分かるように入力波形に対して、増幅された電圧が出力されているのがわかる。増幅率は2倍で、式(3)から導き出される値と同じになる。



これがオペアンプです!!入力された電圧を増幅して出力することが出来るやつです!!
式をまとめると
反転増幅が
・$V_{out}=-\frac{R_{2}}{R_{1}}V_{i}$ (2)
非反転増幅が
・$V_{out}=(1+\frac{R_{2}}{R_{1}})V_{i}$ (3)
です。式からも分かるように、反転増幅回路は1未満に出来る一方、非反転増幅回路では増幅率が1未満に出来ません。そういった特徴もあります。


+αバッファ回路
実はオペアンプには増幅回路以外にもフィルタ回路を作製したりすることもできます。特に重要なのが、増幅度1の増幅しない回路(笑)その名もバッファ回路です!!ボルテージフォロワ回路とも言います。
回路図はこんな感じ。
バッファ回路
図13 バッファ回路

こいつは電圧を増幅しません、入力された電圧をそのまま出力します。ではなぜ重要か、それは
・出力インピーダンスが0
・保護回路として使える

という特徴があるからです。

アナログ回路を作製した時はインピーダンスが電圧信号に影響を与えます。その時、出力インピーダンスがあると、予期せぬインピーダンスを履いてしまうことになります。すると欲しい信号が得られない、なんてことになってしまいます。そのため出力インピーダンスが0というのは美味しいポイントなのです。また、バッファ回路を挟むと回路の経路が分断されるため、もし何かの拍子にVout側に大きな電圧が印加されてしまった時(落雷など)に、Vi側の回路を守ることが出来ます。



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コンパレータとシュミット回路

基本的なオペアンプの性能を説明したところで、いよいよコイルガンの回路でどのように用いいるかを説明していこうと思います。


コンパレータ回路
コンパレータ回路とは何か、読んで字のごとく比較する回路です。図14にコンパレータの基本的な回路を示します。ここでは以降の説明を簡単にするために電源として0~+5 Vの電源を用いいています。
コンパレータ回路
図14 コンパレータ回路

図14に示した回路を用いるとオペアンプの式
・$V_{out}=A(V_{p}-V_{n})$ (1)
から分かるように入力される電圧が比較されて、Voutから増幅された電圧が出力されます。ここでの増幅率Aはいくつなんだ?って思った人はご安心を。この回路では、反転増幅回路のオペアンプの-からVoutに接続される抵抗値が無限大だと考えることが出来ます。要するにこういう事。
コンパレータ無限
図15 コンパレータ回路での増幅率を考えつための回路

こうなったらあとは簡単。反転増幅回路の公式
・$V_{out}=-\frac{R_{2}}{R_{1}}V_{i}$ (2)
で言うところのR2= ∞ Ωになっているという事なので、増幅率Aは無限大に発散していることがわかります。(傾きが無限大って事)これは図14で考えると、Viに印加される電圧が、0Vを下回る負の電圧が印加されるとVout= 5 V。Viに印加される電圧が、正の時はVout=0 Vが出力されることを示しています。図で言うとこんな感じ
コンパレータ電圧
図16 コンパレータ回路の電圧の関係

増幅率Aが無限大なので、スイッチのような挙動になっています。



この回路に少し工夫すると少し違った挙動をしまします。
コンパレータ改回路
図17 コンパレータ回路にちょっと工夫したよ

図17に示したような回路を組むと少し違う挙動をします。Viに印加される電圧が、2.5 Vを下回る負の電圧が印加されるとVout= 5 V。Viに印加される電圧が、2.5 V以上の時はVout=0 Vが出力されることを示しています。
コンパレータ改
図18 コンパレータ回路にちょっと工夫したよの時の電圧の関係

こうなるのは式(1)を見れば明らかに分かりますね。
これがコンパレータ回路です!!





+α使い方(笑)
んじゃ、これどんな感じで使えるのよと言いますと、例えば図19のような水をためる仕組みを考えます。
コンパレータ使い方
図19 自動給水スットップ機構付き水溜

あらかじめ±5 V電源を別に用意しといて、浮きに可動することで動く接点を電源に繋げるとします。この時、蛇口から水が入ると浮きが上がるのでオペアンプに印加される電圧が-5 Vから5 Vへと変化していきます。この時オペアンプに印加される電圧が0 Vを超えた時にVoutから出力される電圧が5 V→0 Vになります。Voutの先に蛇口のポンプの電源などに繋げていたら自動で給水が止まります。

こんな感じでコンパレータによって比較することで、物を制御することが出来ます。





シュミット回路
シュミット回路とはさっき説明したコンパレータ回路の上位互換的な回路のなります。図20に基本的なコンパレータ回路を示します。以降の説明を簡単にするためにR1=R2=1 kΩ、オペアンプ電源を±15 V、組み込む電源を5 Vとします。
シュミット回路特性
図20 シュミット回路

この時の電圧の特性は図21のようになります。
シュミット回路
図21 シュミット回路の電圧特性

どんな挙動をしているかと言いますと、矢印の向きにのみVoutの電圧の変化が起きます。Voutが15 Vの時はViが10 VになるまでVoutは変化しません。Voutが-15の時はViが-5 VになるまでVoutは変化しません。つまり、この四角く囲ってある部分では電圧の変化が起こらないという事です。

この時の切り替え部分の電圧は組み込む電源を5 Vまでにどれだけ電圧降下するかによって求めることが出来ます。図22に10 Vの求め方、図23に-5 Vの求め方を示します。
シュミット回路計算1
図22 10 Vの求め方

シュミット回路計算2
図23 -5 Vの求め方

オペアンプの内部には電流が流れません。つまり、シュミット回路の電流の経路はVoutから組み込んだ電源までしかありません。なので、切り替わる部分の電圧は今回の場合は±15 Vの時に点Aの電圧がいくつになるかによって分かります。今回はR1=R2だったのでこうなりますが、違う抵抗を用いれば切り替わる電圧も変化します。例えはR1=2 kΩ、R2=10 kΩとすると、切り替わる電圧は約-11.7 Vと約13.3 Vになります。計算してみてください。

これがシュミット回路になります!!コイルガンではこのシュミット回路を用いてコンデンサの充放電を行い矩形波を生成します。

この構造がどこで役立つかと言いますと、Viに定常的にノイズが発生する部分とかです。ノイズ部分でVoutが変化してしまうと、意図したVoutの切り替えが出来ません。そこでシュミット回路を用いいるとノイズでVoutが変化してしまう問題の解決が出来ます。



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次回「コイルガンの作り方~回路編③矩形波の生成~」(近日公開)





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